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2010年2月7日日曜日

おべっかを使ってはいけません

知恵の遥かな頂

たわいもないこの世の人々を喜ばせるために

無意味なおしゃべりにふけったり おべっかを使ってはいけません

それを強く戒めるラマの教えにしたがって

心を深く内側に向けていかなくてはなりません

あなた方は学問にもすぐれた勇気もある人々です

心の喜びは他人からもたらされるものではないことを知って

この世のことを遠く離れて瞑想の部屋で

じっと心の本性を見つめてください

ふくらんだエゴと無知に汚された心を浄化してください

この人生で得た財産や名声にすがっていても

死はいつ訪れてくるかわからず、そのときには閻魔の王を

おだてたり、賄賂でごまかすことなどできません

自分が得たものをより高い世界に向かってささげようともせず

苦しんでいるものたちに与えることもしないでいると

みずからを楽しむこともできないままに

一生に貯めた財産などは、一瞬の間に消えていくのです

食べものも話すことも、いつも必要なものだけにとどめて

この世をあまねく照らすダルマの海に心を集め

それを喜びとして今生と来世を生きることができますようにと

私は心からお祈りしています

すぐに衰え消えていく財産や名声などから離れて

満ちていく月のように喜びが常に殖え増し

輝き燃え上がる幸福に、全世界が

夜も昼もなく包まれてあることを、お祈りしています


ラマ・ケツン・サンポ 
中沢 新一  

『 知恵の遙かな頂』より

【内容紹介】
“知恵の海”が私に教えてくれたこと。チベットの小さな村で生まれた少年は、人類の叡知の伝統を志す。人類の叡知の伝統を志す。清明な精神生活から中国のチベット侵攻、インド亡命、そして日本へ…波瀾万丈を生きた老僧が濁世に伝える魂の遍歴。感動的巨編。
【目次】
プロローグ
第一章 少年の頃
第二章 ロンチェン・リンポチェとの出会い
第三章 扉が開かれる
第四章 まわり道
第五章 驚異の体験
第六章 夢と現実(うつつ)
第七章 高い頂をめざして
第八章 ヤンティ・ナクポ
第九章 不吉の前兆
第十章 運命のいたずら
第十一章 ラバと愛馬
第十二章 インドの日々
第十三章 六義園のカモ
エピローグ
感謝の言葉

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